『苦しめてごめん・・』―消せない過ちを悔いる日々―
 暗い雰囲気にしないよう明るい調子で友里に尋ねた。



 「うっ、うっ~苦しいの。すごく苦しいの。

 お腹にいた私の赤ちゃん・・どうしよう、忘れようって思うのに
頭の中に残ってる記憶が邪魔をして、胸が痛くてたまらない。

夜眠れない、うっぅー」



 俺は人の慟哭というものを始めて目にした。


「今夜ついててやるから」

「ごめん、無理させて」



「友里、俺は友里にもう一度赤ちゃんプレゼントできるけどどうする? 

 赤ちゃんがちゃんと友里のお腹に戻って来たら結婚してふたりで
育てるっていう案もあるぞ。どうする? 友里の好きにしたらいい」
 


「あぁぁーーっううぅーーっ」



 俺がそう提案すると友里が過呼吸起こしそうなほど号泣し、俺にしがみ付いてきた。


          ◇ ◇ ◇ ◇



◇孤独


 友里の家を後にしたものの実家へは足を運ぶ気になれず、

人工ではあるが温泉付きで疲れを癒してくれそうなホテルに

2~3日滞在することにした。


 何せとにかく心身ともに酷く疲れを感じる。


 もう何も考えたくないのに走馬灯のように本社へ異動になってからのことが
次から次へと思い出される。


 転勤さえなければ・・。

 どうせ辞めることになるのが分かったいたなら、あの時辞めてここに残ればよかった。


 根米のような性悪女に引っかかることもなかっただろうし、関りを持たなかったら
こんなことにはならなかっただろう。



 最初に友里が子供のことで不安げに連絡を寄こした時、どうして一度友里の顔を見に、
話しを訊きにこっちへ帰って来なかったのかと悔やまれてならない。


 これが最初のミス。



 その次のミスは堕ろすように言っただけでちゃんとその後のことを
見届けなかったこと。


 お互いの連絡がプツリと取れなくなった時もこちらへ一度戻っていれば。



 そうだ、今回帰省する前に出したように手紙一通出していれば、
何かが変わっていたかもしれない。
 


 慣れない仕事に忙殺される中での上司からの情け容赦ない叱責、
根米菜々緒の甘言、そんなものに自分は負けたのだ。



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