『苦しめてごめん・・』―消せない過ちを悔いる日々―

「神尾くん、あんな『ヒキガエル親父』の言うことなんて聞き流せばいいから。
私が後で絞めとくわ」

そう言い、彼女は勇ましい台詞で慰めてくれた。


 俺はその言葉を聞いてすぐさまこう思った。

『勇ましいのはいいけどさ、口先じゃなくてほんとに絞めてくれよー』




◇女友達


 新しい環境で仕事にも対人関係にもなかなか馴染めずうつうつとしているところへ
高校時代の同級生三嶋友里からメールがポツポツ入るようになった。


日々多忙な上に仕事の煩雑さが相まって、そのうえ上司からは理不尽な叱責を受けている身では
とても『寂しい』と発信してくる彼女に対して満足のいく返信はできないでいる。


 それで彼女はよけい寂しさが募るのだろう。
 何度も同じような文面のメールが送られてくる。


 事務所にいる人間が少なくなった午後、根米に声を掛けられた。


「神尾くん、今日は『ヒキガエル』代休取ってて居ないからうるさくなくていいよねー」

「ほんと、静かで仕事はかどりますわ」

「それにしてはスマホを見て暗く沈んでなかった?」

「そんなに俺、暗いですか?」

「うん、かなり。何かあった?」

「まぁ、高校時代の友人から『寂しい、会いたい』ってメールがきちゃっててね」

「・・ということは、そのメールの主は女・・だよね?」

「・・まぁ」

「神尾くん彼女いないって言ってたの嘘だったの?」

「メールきてるのは友だち」

「ほんとかなぁー? まっいっか。
 折角『ヒキガエル』が居ないのにズドーンとオーラが暗いのは
その女友だちからのメールのせいってわけ? 何て言ってきてるの?」


「次はいつ頃あっちに帰って来るのかっていうのが多いね。
あっちにいた時はしょっちゅう会ってたから」


「ふ~ん、会いたいって言われて神尾くん困ってるんだよねぇ~?」


「まぁね。今はこちらでの生活がまだ上手くまわせてなくて気持ちに余裕がないから
誰かを慰めたり相談に乗れるような状況ではないからね。どう返事していいか悩ましいよ」


「ね、スマホちょっと貸して。私が文章を考えたげるよ」

 そう言うや否や根米はメモ帳を開き器用に文章を打ち込んだ。


『今は自分も周囲の人たちに慣れるのと仕事を覚えるのに必死で大変なんだ。
気持ちに余裕ができたらじっくりと話を聞いて時間ができた時にそちらに会いに帰るから』

 どう? こんな感じ。


「おっ、いいねー。これ使わせてもらうわ。サンキュー」


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