『苦しめてごめん・・』―消せない過ちを悔いる日々―
 
 たった一泊二日の慌ただしい帰省でそれほどゆっくりはできなかったけれど
表情の明るい友里を見て自分も久しぶりに穏やかで凪いだ気分になれた。


 そんな前向きになれた帰省から赴任先に戻るとまたブチブチと上司から
パワハラを受ける毎日に戻っていった。

 
ちょうど事務方の根米の席から上司と俺との遣り取りがよく見えるようで
度々彼女から慰められるようになった。


 
 ある日の事、仕事が終わる間際にまたまた嫌味を言われた挙句しれっと
係長の仕事を押し付けられた。

 この時も彼女から慰められ仕事までも手伝ってもらった。

 本来ならしなくてもいい仕事、残業を独りだけでこなさなければならなかったとしたら、
とても気が滅入ったことだろうけれどベテランの根米に手伝ってもらったことで
不安もなくなり気持ちが軽くなった。


 依存しているとは思いたくないけどいつの間にか知らず知らず頼りにしているのは否めない。


 この時、機転の利く根米は書類にすごい仕掛けを仕込んでいたようで、
後日係長は自分の責任でしなければならなかった仕事を俺に押し付けていたことがバレて
こっぴどく課長を飛び越えて部長から叱責を受けることになった。


 わざと数字を書かずにいた個所があり課長や部長に訊かれた係長は目を
白黒させるばかりだったようで。

 俺を呼びつけ訊いてきた。
 


 書類を見た俺は『あっ、根米が手伝ってくれたページだ』とすぐに気付いた。

 何で? と思ったものの仕事に係わった俺にはちょっと調べればすぐにわかるものだった。


 お偉いさんがいるにも係わらず俺が残業させられた腹いせに自分(係長)を嵌めたと
勘違いした奴(浅野係長)はものすごい剣幕で俺を罵倒してきた。


「どうして君はここの大事な数字を書き込まなかったのか? 俺を恨んで仕返ししたのか?」


『浅野さん、仕事をこなすのに精一杯な俺にそんな芸当できませんよ』

 そう反論しようかと口を開きかけた時、気が付くと根米が大声での叱責を聞きつけたのか、
応援に駆けつけてくれていた。
< 8 / 33 >

この作品をシェア

pagetop