『愛が揺れるお嬢さん妻』 かわいいひと
確かに見目麗しく美人というよりイケメンと形容したくなるような容貌ではあるが、
大林が同性から異性を見るような眼差しを向けられていたとは。
10代の頃から夫LOVEで結婚してから5年、これまで夫以外の異性に
余所見などしたことがなく、また見た目も内面も夫以上の異性と出会ったことのない
苺佳からすると不思議な感覚だった。
彼女たちの立ち話を聞いていると、大林にトキメイているような話振りなのだ。
苺佳からしてみれば、まず宝塚というものに興味を持ったことがなく、
男役の女性を異性を慕うように好きになるという感情(感覚)そのものが
理解し得てないので、そういう世界もあるのだと思うしかなかった。
―――――苺佳自身入園式の日、大林から「去年、外来に来てた人・・かな?」と
鳶色の瞳を向けられた時、ドキドキするという経験をしていたのだが、
そこはカウントされなかった。
苺佳自身、忘れてしまいたいことだったから。―――――
きっと皆の注目の的王子からあんなひどい言葉を掛けられたのは
100人くらいいそうな母親たちの中できっと自分だけなのだろう。
「ふんっ、何か素敵ぃ~カッコいい~、よ。あんなへっぽこ野郎、ヤブ医者ぁ~」
立ち話している人たちの方に向けてキタナイ言葉で彼女のことを罵っていたら、
いつの間に? 自分のところまで戻ってきていた娘に問われた。
「ママ、へっぽこ野郎ってなぁに?」
「えっ? へっぽこじゃなくて、ひょっとこ野郎って言ったのよ。面白い人のこと」
「ふ~ん。ヤブ医者ってなぁ~に?」
「お医者様なのに病気を治せない人のこと。ねぇ、眞奈、今日の晩御飯何がい~い?」