『愛が揺れるお嬢さん妻』 かわいいひと
急いで話題を変えたけど、危ないあぶない。
子供の前で迂闊に口から思ってること出せないわね。
もう4才で人の話すことよく聞いてるもの。気をつけなきゃだわ。
ほんとは少し残念な気持ちだったのだ。
別に特別スター扱いしたいわけじゃないけど、周りの母親たちと一緒になって
『カッコいいよね』って言えたら良かったのだ。
へっぽこ野郎だのヤブ医者だの言わなければならない自分の立ち位置が残念でならなかった。
悪態をつきつつも、彼女たちの他愛のない会話を耳にした苺佳は
自然と彼女の佇まいを思い返してもいた。
そう、今耳にしたように彼女の瞳の色と輝きは顔の造形とマッチしていて
人を虜にする魅力がある。
頬から顎にかけてのラインが素晴らしい。
シャープで造形が美しく、前髪を上手く7:3に斜めにサイドへと
全体的に流し、毛先の跳ねているショートヘアーがそんな彼女を一層引き立てている。
耳にはBLACKの小さなピアスが嵌っており、服装がこれまた小粋な
マニッシュ風で高身長ときている。
宝塚の男役に嵌れる女性なら完全に彼女の虜になるのは必至だろう。
すごいな、彼女。
まだ入園式から一ヶ月足らずだというのにこの人気振り。
なんだか分からないけど、モヤモヤしてしまった。
『あんな奴に人気があるなんて、人生舐めてるよ』胸中の呟きに、ン?
誰が人生舐めてることになるのかしら? そそそ、大林だよ。
大林はさぁ、人生舐めてんのよ。
と、むちゃくちゃな理論をぶちかましつつ、苺佳は眞奈と帰途についた。
◇お迎え
翌日のお迎え時は午前中晴れていたのにお日様が顔を隠して
どんより曇り空だった。
眞奈は比奈ちゃんと砂場で遊んでいた。
「ママ、もう少し遊んでてもいーい?」
「いいよぉ~。比奈ちゃんちのママが迎えに来るまでね」
そう言って大林さんを待っていたけれど、1時間過ぎても彼女は現れなかった。