『愛が揺れるお嬢さん妻』 かわいいひと
      
 比奈は実の娘じゃない。

 急死した姉の子だ。

 比奈は両親ともに事故で亡くした。


 本来ならばうちの両親が比奈の世話をできればいいのだが。

 父親が病気で入退院を繰り返している為、母親が比奈の面倒までは見切れない。


 それで、ちょうど研修期間も終了し医師としての勤め先も決まった私が
働きながら比奈を育てることになった。


 だから私や家族のいるところでは比奈は私のことを瑤ちゃんと呼ぶ。

 比奈に別段保育園では私の事を『ママ』と言いなさい、とは
言いつけてはいなかったのに、比奈はちゃんと空気読めてたんだ。

 比奈、すごいぞっ。

 

 苺佳は翌月曜日から早速金曜日まで比奈と眞奈のふたりを一緒に連れて
帰るようになり、大林もお迎えは保育園ではなく、苺佳の家に。


 そして比奈を自宅へと連れ帰る、という生活になり。

 そのような生活に慣れた頃、土日を挟み、月曜はふれあい保育の行事が彼らを待っていた。



 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 今日のふれあい保育はキュウリやナス、トマトなど野菜の苗の植え付けになる。


 全員揃ったら担任のところまでプランターを取りに行くことになっている。


 苺佳と眞奈含めほとんどの保護者と子供たちが集った頃、遅刻スレスレに
颯爽と現れた大林と比奈。


 比奈は眞奈の姿を見つけるや否や急ぎ足で駆け寄って来た。

 感じる周囲の婦女子たちの大林に向けられる熱い視線。


 まただ。はぁ~。苺佳の口からため息が漏れた。

 明らかに大林は彼女たちのスターだった。


 これまでも何となく感じてはいたけれども、今日今この時、
彼女たちの気持ちなど気付きたくなかった。


 ・・なのにいち早く気付いてしまった。
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