『愛が揺れるお嬢さん妻』 かわいいひと
◇大切なもの
七夕の日、いつもはギリギリに間に合うというのが大林瑤子の
スタイルになっていたのだが、珍しく今回はいつもに比べるとやや早めに保育園に着いていた。
靴を脱いで廊下に上がろうとしたところで比奈が叫んだ。
「眞奈ちゃんだ」
瑤が振り返るとちょうど苺佳家族3人が門扉の開いた所から
入ってくるところだった。
手ぶらの苺佳と眞奈が見えた。
そして妻と子をここまで送って来たのだろう苺佳の夫だという英介が
彼女たちの荷物を手に持ち、こちらに向かって歩いて来るのが見えた。
前回送って来た時の英介はスーツ姿だった。
今日はラフでカジュアルな装いで登場ときた。
それが更に以前のイメージよりも彼を若々しく見せている。
やや釣り上がり気味の程よい濃さの眉、凛々しさを感じさせる大きな二重瞼、
上唇と下唇は黄金比が素晴らしく綺麗なM字型の唇。
凛々しさと甘さが融合されている容貌。
苺佳夫婦は典型的な美男美女カップルといえるだろう。
◇ ◇ ◇ ◇
迎えた初日の夜のお泊りのこと。
就寝は20時。
壁際の苺佳から右手に眞奈、瑤、比奈と並んで寝ていたのだが
比奈に呼ばれて眞奈が苺佳の横から比奈のところへ行ってしまった為、
苺佳のすぐ隣に瑤が並んで寝ることになったのだが先に夢の世界へと
旅立っていった苺佳は知らなかった。
……なので、いつもより早く寝たせいか、夜中にふっと目が覚めてしまった苺佳。
娘の方を見たつもりだったのに……『えっ』瑤ちゃんがいて、私のことを見つめていて
びっくり。
「おはよー」
えっ、私は窓の方を見た。
「まだ暗いよ、瑤ちゃん」
「たまたまだよ」
「たまたま?」
「わたしが苺佳を見てたこと。
偶然同時刻に目が覚めたってだけ。
見つめられてたなんて気持ち悪いこと想像したでしょ」
「そ、そんなこと・・ないわよ」
「そう? ならいいけど。早く寝ろよ」
そう言って瑤ちゃんは背を向けた。
なら、折角・・たまたま・・同時期に目覚めたっていうのに、
あまりにも素っ気なくて寂しいーよ、瑤ちゃん。