『愛が揺れるお嬢さん妻』 かわいいひと
 家族にはあまり気に入ってもらえなかった自分のテリトリーの中で
たまたま出会った女性、山波美羅《やまなみみら》。


 見た目も内面も・・そして社会に出て働いている同志として・・
興味と傾倒の中間くらいの心持で美羅と繋がるようになり、性行為を伴う付き合いに
なるのにそう時間はかからなかった。


 聞いたわけではないが、はじめましての時からなんとなく既婚者じゃないかと
思っていたので、その()、初めてホテルに行った時に彼女のほうから
自分は既婚者だと告げられたが、別段驚きはなかった。


 やはり、と。

 独身者同士のようなステディな関係には進めませんよ、という発信だったのだろう。 
 


 そして彼女は俺に『結婚してますか?』というような言葉ではなく、こう訊いてきた。


「お子さんは何才?」
 
 この彼女の言葉・・は『私たち気楽な関係を楽しみましょうよ』と、
そういう意味だと俺は捉えた。


 お互い日常から離れて少しスリリングな時間を共有するにはちょうど良かったのだ。


 積極的にそういう相手を求めていたわけではなかったが、
不思議と妻に対する罪悪感みたいなものは感じなかった。


 お嬢様育ちのおっとりしている苺佳に、見つかるなんてことは
全然考えてもいなかったし、万が一、バレそうになっても言い訳して
言いくるめる自信もあった。



 なんだかんだ言って、もし自分が誠心誠意謝罪すれば
彼女は俺を突き放したりできないだろう、という思いも。


 自惚れかもしれないが妻は俺に惚れているという自信もある。


 遠い昔のことだが、弟の仕出かしたことにも苺佳は寛容だった。

 あの時の一連を見てきた俺は、彼女がふくれたり、多少怒ったり泣いたりも
するだろうが最後には折れるだろう、とそこはそれほど心配していない。




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