『愛が揺れるお嬢さん妻』 かわいいひと
◇それって誰のこと?
深夜、隣に寝ていた夫が肩越しに私を優し気な手つきで抱き締めてきた。
それに応えて寄り添った私の耳元で甘く囁いた。
『みら・・』そして更に愛し気に両手で私を背後から包み込んだ。
―私の名は苺佳―
悲しいかな、この時の私は少し前から目覚めていて、頭はとうに覚醒していた。
聞き間違えようもない夫の寝言に私は朝まで眠れない時を過ごすことになった。
昨夜就寝してから数時間後、私は珍しく睡眠の途中で目覚めてしまった。
あ~ぁ、原因は昨夜のお茶の飲みすぎか!
トイレに行きたいけれど布団から出るのが億劫でたまらない私は、
後5分したら起きよう、そう思うものの、5分が過ぎるとまたまた先延ばしにして
しまい、布団のなかで『早く起きないと~』と思うだけで終わってしまう、の
繰り返しでやり過ごし、ベッドの中で苦悩していた。
そうこうしているうちに、どんどん頭も目も冴え渡りはじめ、完全に目覚めてしまい。
そんな状況下で聞いた夫の寝言。
娘の名前は眞奈。
夫の口から零れ落ちてきた言葉は、私でもなく娘の名でもなかった。
眠れない夜を・・時間を・・朝まで過ごすことになった私が考えたこと。
それは、この先の自分の生き方について、だった。
人生60年だったとしても残りの人生20年で済まない。
今じゃ平均寿命が80年の時代がきているのだ。
40年もそして下手をすると50年も先のある人生のことを考えると
泣いてる場合じゃないって思った。
結末として一番いいのは、『みら』という人が夫の知り合いの女性だったとして、
前々からいい感じに思っていた女性で、たまたま夢に出て来ただけっていうパターン。
それとて、なんだかモヤモヤ感は残るけれど、夢の中までは束縛のしようがないものね。
そんなやこんな、考えているうちに遠い昔のことに思いが及んだ。
それは、夫英介と結婚相手として出会うまでのこと。