『愛が揺れるお嬢さん妻』 かわいいひと


 気が付くとおもむろに英介は脳内で、家族で最後に出掛けたのは
いつだったろうかと、記憶を辿った。


 辿ってはみたものの思い出せず、今度は山波美羅と初めてホテルへ行ったのは
いつだったかと、記憶の辿り方を変えてみた。


 あれは昨年の冬だったはず。

 そしてその前の確かまだ残暑の残る頃に、眞奈を連れて
苺佳と串カツ屋に行ったよなぁー。


 で、あの後一度遊園地へ行ったンだ。


 それでその次に行ったのが最後だったんじゃないかと思うのだが、それが
10月だったのか11月だったのか、よく思い出せない。


 ざっと遡ってこの半年余り、美羅と過ごすことばかりに気を取られ、
苺佳や眞奈の存在は有って無きに等しいものだったかもしれない。


 美羅と出会って付き合う前には考えられないことだった。


 ずっと苺佳は愛しくて大事な存在だった。

 そしてその愛しい妻の子供である眞奈も目に入れても痛くないほどに
愛おしい我が子だった。


 美羅が仕事で今回俺と会う時間がどうしても作れず、それでぽっかりと
時間が空いて、思い出したかのようにずっと放置してきた家族サービスを
しようかと娘と妻に声を掛けたわけだが、思いがけずばっさりと断られたのだ。



 グルグル考えているうちに違和感の正体に気付けた。


 最近たまに早く帰れる日があって娘が起きている時も以前のように
『パパ、パパあのね~』という風に甘えて来なくなっていることに。


 妻の苺佳も以前は疲れていて真剣に返事を返さずおざなりな相槌しか打って

いなくても聞いてほしいことがたくさんあるようで、熱心に話掛けて

きたものだが、そういえばここのところ必要最低限の会話しか

してないような気がする。




 だけど俺はそういうことも何とも思わずスルーしてたってことにも
気付いてしまった。


 どれだけ自分の頭の中が山波美羅でいっぱいだったかってことにも
改めて気付かされた。
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