『愛が揺れるお嬢さん妻』 かわいいひと
 瑤は隣で眠る苺佳にそっと声を掛けた。


--今年も先に眠りの世界に早々と旅立っていった彼女の寝顔を見ていたら、
これも昨年と同じなのだが夜中に一度苺佳が目を覚ましてしまい、目と目とが
合う形になった。-



 去年は見つめていたのがバレた気まずさから意地の悪い言葉を投げつけてしまったのだけれど、
今回は自分の気持ちを知らせてあるので動揺することもなく、苺佳に向き合えた。



 目を覚ました時にじっと見ていた私と目が合ったことに気付いた苺佳が
にこっとして謝ってきた。



『どうしたの? 眠れないの? 私だけ先に寝ちゃってごめんね。
 確か去年もだったよね、私ったら先に寝てしまって』



などと、かわいいことを言うもんだから、彼女に触れたくなって少し困ってしまい
意味もなくとっさに手の平同士を合わせたりなんかしてしまった。


 苺佳の顔には? マークが出ていたけれど、『どういうことなの?』って。


 理由はあるけど、言えない理由なんだから言わないよぉ。


『寝ようか・・』とだけ言い置いて、卑怯? にも私はさっさと寝たんだ。


 いろいろ理由を訊きたかったろうけど苺佳は引き下がり
『うん・・』とだけ返事を返してきた。


 目を瞑った後、彼女が横から自分のことを見ているかもしれないと
耳からの情報でそう思ったけれど、ここで再度目を開いてしまったら
手くらいは繋いでしまいそうな気がして、ずっと目を閉じたままでいた。



 そのあと寝付かれないでいた私の耳に、苺佳の寝息が聞こえてきて、
目を開けてみたらそこにはやっぱり可愛らしい寝顔があった。



 ほっとするやら、悔しいやら。
 なぜに? 自分のほうが相手に対する好きな気持ちが多いような気がして、
いやきっと多いんだけど・・だからやっぱり悔しい。


『苺佳の旦那、いらないなら私に苺佳をくれよぅ』
 

 切ない瑤の気持ちを乗せて、七夕の夜は更けていった。



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