辺境の貧乏令嬢ですが、次期国王の王妃候補に選ばれてしまいました
「お母さんにそっくりだ。マルセルに似なくてよかったな」
「瞳は俺似だ」
大男が唸るように言う。たしかに彼の新緑の瞳は、娘と同じ色をしていた。
そんな父に顔を向けたリティは、腰に手を当ててわざとらしく怒った顔をする。
「それより、なんの騒ぎなの?」
それを聞いたマルセルが顔をしかめてむっつりと黙り込む。
代わりに口を開いたのはロベールだった。
「話すと長くなるからかいつまんで説明しよう。まず……そろそろ、ランベール・エリゼ・エモニエ殿下の妃候補が選出されるのは知っているかい?」
「いいえ、知らないわ。中央の話はあまりこちらに流れてこないの」