辺境の貧乏令嬢ですが、次期国王の王妃候補に選ばれてしまいました
「悪いことばかりじゃないと思うんだが」
「リティを売れと言うのか? 王国の金庫をまるごともらってもお断りだ」
「マルセル、そうじゃない。そうじゃないんだよ」
長期戦になりそうだと判断したのか、ロベールが苦笑交じりにリティを振り返る。
「悪いが少しマルセルとふたりで話したい。いいかな」
「もちろんよ。じゃあヒューイを見に行ってもいい? 今日もいるんでしょう?」
「ああ、いるよ。厩舎に繋いであるから会っておいで。久し振りだからきっと喜ぶだろう」
「じゃあ鹿肉を持っていくわね。あれが大好きだったもの」