辺境の貧乏令嬢ですが、次期国王の王妃候補に選ばれてしまいました
 リティの母は、彼女が幼い頃に流行り病によって命を落とした。

 そのときちょうどマルセルは、海を渡ってやってきた侵略者たちと戦っており、妻の死に目に間に合わなかったのだ。

「なあ、マルセル。私だって君やリティに嫌がらせをしたいわけじゃない。ただ、この子がいつまでもここに留まるのはもったいない気がするんだ。もっと多くを見せて、経験させて、自分の力で好きなことを選べるようになってもらいたい」

 マルセルが再び唸る。

 しかしもう反論しようとはしなかった。

「妃候補になれば、令嬢として箔がつく。それに、候補者の支度金として莫大な金も入ってくる」

 それを聞いたリティがぴくりと反応する。
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