冷徹御曹司の偽り妻のはずが、今日もひたすらに溺愛されています【憧れシンデレラシリーズ】

杏奈は懐かしさだけでなく、これほど開放的な笑みを浮かべる響を独占している幸せに胸が震えた。

響がたまらなく愛しい。

今この瞬間の自分は誰より幸せだ。

だったら落ち込んでいる時間がもったいない。

ふたりきりで誕生日を祝ってもらえるのは今年が最後かも知れないのだ。 

杏奈は響と一緒にいられる時間を大切にしようと決め、沈む気持ちを振り払うように笑顔をつくり、タブレットの画面を指差した。

「私、初川作品の中でもこの絵が好きで……えっ……あの」

響に顔を向けた瞬間、お互いの頬が触れ合いそうな距離にあるのに気づく。

あまりの近さに目を逸らそうとしたが、それを許さないとばかりの強い視線を向けられて、動けない。

射るような眼差しは鋭く、まばたきすら躊躇するほどだ。

「杏奈」

色気を含んだ響の声に、杏奈は周囲のざわめきが次第に遠ざかるような気がした。

絡み合った視線を逸らせない、そして逸らしたくない。

このままずっと響に見つめられていたい。

そんな叶わぬ願いが杏奈の胸いっぱいに広がっていく。

「響君……」

杏奈の口からか細い声が漏れたとき、響はふっと表情を緩め杏奈の耳もとにゆっくりと唇を寄せる。

避ける間もなく、杏奈の身体は肩に置かれていた響の手に引き寄せられる。

「え、な、なに……」

全身が火照り始める。

杏奈は照れくささを隠すようにタブレットを一心に見つめた。


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