冷徹御曹司の偽り妻のはずが、今日もひたすらに溺愛されています【憧れシンデレラシリーズ】

紙袋の中には帰り際に響が杏奈に買ってくれた初川の画集が入っている。

会場限定で、これまで発表された作品の中でもとくに初川が気に入っている作品をセレクトした貴重な一冊だ。

かなりの厚みでずっしりと重い。

「他にも初川さんの画集や絵を持ってるだろ。宝物って大げさだな」

エンジンをかけながら響は苦笑する。

「そんなことないよ」

杏奈は響に向かって身を乗り出し首を横に振る。

この画集は販売数に限りがあるうえに装丁も豪華で価格も決して安くない。

そこに響からのプレゼントという付加価値までプラスされているのだ、宝物というのは大げさでもなんでもない。

「よっぽど初川さんの絵にハマってるんだな」

真面目な顔で反論する杏奈を、響は喉の奥でくっくと笑う。

「杏奈のおかげで俺もいい時間を過ごせてよかったよ。もちろん初川さんのことは知っていたけど、実際に作品を見ると圧倒されるな」

響は朗らかな声でそう言って、ゆっくりと車を発進させた。

この車は響がディーラーに何度も通って装備を決めたお気に入りらしい。

納車まで約半年。待ちかねたようにハンドルを握る横顔はまるで新しい玩具を手に入れた少年のようで、会社で顔を合わせても軽く挨拶をかわすだけの『北尾部長』ではなく、杏奈が子どもの頃から知っている『響君』だ。

響は昔から、年子の弟・心汰にいたずらされるたびに守ってくれる、杏奈にとって王子様のような存在だった。



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