冷徹御曹司の偽り妻のはずが、今日もひたすらに溺愛されています【憧れシンデレラシリーズ】
「響君、あの、どうしてそれを……?」
たしかにこれまでにも眠れないまま朝を迎えそのまま響と出かけたことは何度もあったが、うまくごまかしていたはずだ。
「ん? おかしなことを聞くんだな。杏奈のことならなんでもお見通し。俺が杏奈をどれだけ愛情を込めてかわいがってきたと思ってるんだ?」
響は前方を見つめ、滑らかにハンドルを操作しながら平然とそう口にする。
杏奈は目を丸くし、再び言葉を詰まらせた。
まるで杏奈がかわいくて仕方がないとでもいうような甘い答えが返ってきて、全身がかあっと熱くなる。
たしかに響は杏奈が生後三日目に、両親に連れられて病院まで会いに来たと聞いている。
その日以来杏奈は人生のほとんどを響に見守られてきたようなもの。
響がお見通しだと余裕の口ぶりで話すのも、もっともかもしれない。
「まあ、俺が気づいてないと思ってすましてる杏奈もかわいいから、そのままでいいんじゃないか」
「か、かわいいって」
照れるでもなくサラリと杏奈を喜ばせる響に、杏奈はあたふたする。
「響君、あの、とにかく今日は忙しいのにありがとう」
大人になっても響の王子様っぷりには敵わない。
杏奈は強めの口調で礼を述べ、うぬぼれないよう改めて気持ちを引き締めた。