冷徹御曹司の偽り妻のはずが、今日もひたすらに溺愛されています【憧れシンデレラシリーズ】
誕生日翌週の金曜日、杏奈は同期の戸部真波と社員食堂で待ち合わせ、昼食をとっていた。
真波とは新入社員研修で同じグループだったことで仲良くなり、配属後も親しく付き合っている。
人見知りがちの杏奈と違って社交的な真波は、誰とでもすぐに打ち解けられる積極的な姉御肌。
杏奈と同じ総務部所属だが、真波は本社ビル一階で受付を担当している。
外交官の父親の仕事の関係で海外生活が長く、英語を始め数カ国語に通じている。
海外からの来客にも臆せずスムーズに対応する姿は知的で凜々しい。
杏奈は同期ながら学ぶべきところが多い彼女を尊敬し、なにかと頼りにしている。
「あ、遅くなったけど誕生日おめでとう」
定食が載ったトレーを手に食堂奥の窓際カウンターに並んで腰を下ろしてすぐ、真波はトートバッグから小さな包みを取り出した。
「伶央が誕生日に間に合わなくてごめんねって。でも、時間がかかった分かなりの出来映えだっていい顔してた。私もなかなかだと思うよ」
真波は淡いオレンジの包装紙でラッピングされた包みを杏奈に手渡し、ワクワクした表情を見せる。
「もしかして、伶央さんの刺繍?」
杏奈は両手で包みを受け取りながら驚きの声をあげる。
「もちろん。本当なら先週のうちに仕上げて当日までに杏奈に贈るつもりだったみたいだけど。忙しくて間に合わなかったんだって。ごめんね」
「ううん、そんなこと謝らないでよ。え、でも、これって……」