冷徹御曹司の偽り妻のはずが、今日もひたすらに溺愛されています【憧れシンデレラシリーズ】

杏奈の手の中にあるのは三センチほどの厚みがある軽く小さな包み。十センチ四方だろうか。

「もちろん杏奈への誕生日プレゼント。開けてみて」

「う、うん。ありがとう。でも、いいのかな。汀伶央の作品は今大人気でなかなか手に入らないのに」

杏奈は困ったように真波に視線を向ける。

「そんなの気にしないで是非受け取って。伶央が今刺繍で生活できていいるのは杏奈のおかげ。この小さな作品程度じゃそのお礼にもならないと思う」

「それは違う。私も父さんたちも、単に伶央さんのファンだっただけ。作品をうちのカフェに飾らせてもらってお礼を言わなきゃならないのは私の方。真波の恋人だって知ったときはびっくりで、家族全員大騒ぎだった」

杏奈は包みを手に語気を強めた。

真波の恋人である汀伶央は人気の刺繍作家だ。

刺繍とはいえ多くの色を使いグラデーションを効かせた作品には立体感があり、且つ繊細。風景を得意としていて、一針一針丁寧に仕上げた作品はまるで絵画のようだと評価が高い。

杏奈はたまたま見つけた伶央のSNSで彼の作品を知り、すぐに作品を購入した。

中でも富良野のラベンダー畑の景色を刺繍した一メートル四方の作品が一番のお気に入りで、両親が営むカフェに飾ったほどだ。

それがカフェを訪れた客たちの目に留まってSNSで話題を呼び、汀伶央の名前はあっという間に広まった。

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