冷徹御曹司の偽り妻のはずが、今日もひたすらに溺愛されています【憧れシンデレラシリーズ】
「そうなの。次は博多屋台の空気感を作品にしたいって言い出して。だから今回も恋人兼コーディネーターとしてサポートしてくるよ」
真波は面倒くさそうな顔をしているが、恋人を支えているという自信からか楽しそうだ。
伶央は実際に目にした風景を刺繍にすることが多く、撮影旅行のたび真波が現地に同行している。
同行というよりも、切符やホテルの手配を含む段取りのほとんどを真波が引き受けていて、コーディネーターというのもあながち間違っていない。
「三十歳にもなって刺繍以外なにもしないから困るのよ。新幹線の予約くらいスマホでできるのに、相変わらず覚えようとしないんだから」
鋭い言葉とは裏腹に真波の表情は誇らしげだ。
「あ、ご飯が冷めるね。早く食べよう」
真波は時間を気にかけ箸を手に取った。
子どものときから海外での暮らしが長かった真波は、大学入学のため家族と離れてひとり帰国した。
その際世話になったのが真波の父親の友人である伶央の父親だったそうだ。
真波は当時から刺繍で生きていくと決めていた五歳年上の伶央にひと目ぼれし、想いをぶつけた。
伶央も物怖じせず素直な真波を気に入ったらしく、それ以来真波は恋人として伶央に寄り添いサポートを続けている。
現在伶央が順調に活動を続けているのは、真波の存在があってこそ。
伶央は以前、真波からは作品を生み出す原動力だと言っていた。