冷徹御曹司の偽り妻のはずが、今日もひたすらに溺愛されています【憧れシンデレラシリーズ】

そのときの真波を愛しげに見つめる伶央の横顔を思い出し、杏奈は胸がちくりと痛むのを感じた。

真波と伶央が出会ったきっかけは、杏奈と響と同様、父親同士が友人同士だったからだ。

真波から「私たちってよく似た恋愛をしてるね」と言われたことがあるが、杏奈にしてみれば自分と真波の状況はまるで違う。

杏奈は響から恋愛対象として認識されていないだけでなく、真波のように響の役に立っていない。

せめて仕事で響の役に立ちたいと意気込み北尾食品に入社したが、今ではそれすら絶望的だ。

仕事上の接点がないうえに響のために差し出せる強みもない。

食品会社での仕事に必要だと考え管理栄養士の資格を取ったが、自ら配属を希望したとはいえ総務部ではその資格が生かせる業務はほぼゼロだ。

結局入社三年目を迎えた今も、響の役に立てていない。

それどころか響からは今も妹のようにかわいがられ、助けるどころか見守られている。

杏奈は勢いよく海老フライを口にする真波を見つめながら、自分も彼女のように好きな人の役に立ちたいと肩を落とした。

「杏奈? 早く食べた方がいいよ。これ、サクサクしててすごくおいしい」

「あ、うん。おいしそうだね」

杏奈は箸を手に取り姿勢を正す。

響のことでこれ以上悩まないと決めたばかりだ。

気持ちを切り替え、真波に続いて海老フライを頬張った。


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