冷徹御曹司の偽り妻のはずが、今日もひたすらに溺愛されています【憧れシンデレラシリーズ】
「あ、ねえ。誕生日はどうだったの? 大好きな王子様にお祝いしてもらったんでしょ?」
「だ、だいすきって……」
ひやかし交じりの真波の問いに、杏奈は激しくむせた。
昼食を終えた杏奈は真波と別れ、総務部に戻った。
食事中、響と過ごした誕生日のことをかいつまんで話した杏奈に、真波はうんざりした様子で「そんなに好きならさっさと気持ちを伝えればいいのに」と言って呆れていた。
杏奈のように気持ちを隠して想い続けるなど信じられないらしい。
真波の気持ちは理解できるが、それはできない。想いを伝えても響を困らせるだけで、自分がラクになるためのわがままだとわかっているからだ。
「だめだめ。もう悩まない」
杏奈はいつまでも想いを断ち切れない自分に苦笑し、席に着いた。
杏奈が所属する総務部は、社内の雑多な業務を引き受ける総務課と法務関連を担当する法務課を抱える大きな部署だ。
法務課の業務には会社として対応する必要がある法律関係の処理はもちろん、杏奈が担当している株主対応も含まれている。
配属後すぐに教育担当の先輩から手渡されたのは、北尾食品の発行済株式総数や転換社債の転換価額などが書き込まれた資料。
同時にその日の株価を尋ねられたが答えられず、冷や汗をかいた。
そして初めて名刺交換をした相手は幹事証券会社の男性だった。