冷徹御曹司の偽り妻のはずが、今日もひたすらに溺愛されています【憧れシンデレラシリーズ】

須田が焦る理由に、杏奈は思い当たる。

須田は年に一度社内で開催される『新商品そして販売中の商品がもっと売れるアイデア募集』に応募するようだ。

全社員が応募できる恒例のイベントで、毎年かなりの人数の社員が参加している。

その始まりは二十年以上前に遡る。

『北尾食品は食で人の生活に直結する会社だ。生活の質を向上させるために、社員の率直なアイデアを取り入れ生かしたい』

それは前社長の発案によるもので、途中幾度かのブラッシュアップを経て、今では新商品の提案だけでなく既存商品の新しい販売戦略など、自社商品への愛に基づいたアイデアを募集している。

お祭りのような側面もあり軽い気持ちで参加している社員がほとんどだが、クリエイティブな才能に自信がない杏奈はこれまで一度も参加したことがない。

今年も社内のあちこちで盛り上がる声を耳にしているが、他人事としてやり過ごしていた。

「頑張るんだね。なにか手伝おうか?」

入社一年目の須田が応募すると聞き、そのやる気に杏奈は感心する。

「大丈夫です。それに頑張るもなにも、せっかくこういうイベントがあるんですから参加して楽しまないと。もしも採用されたらラッキーですし」

須田は杏奈に向かって当然のように答える。

「ラッキー? そう……かな」

杏奈は真波も同じようなことを言っていたと思い出す。


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