冷徹御曹司の偽り妻のはずが、今日もひたすらに溺愛されています【憧れシンデレラシリーズ】
「普段本業に関わっていない社員にも年に一度くらいうちの商品の素晴らしさを思い出してほしいし北尾食品の社員であることに誇りを持ってほしい。そのためのイベントだって部長が言ってました」
「誇り……」
「あの、ご存じだと思いますけど部長は来年の三月で定年を迎えるので今年が最後なんです。だから部長を喜ばせるためにも参加しませんか?」
「そんなこと……考えたこともなかった。部長を悩ませてたなんて……」
これではまるで自分の方が新入社員のようだ。
「あー、そんなに落ち込まないでください」
黙り込んだ杏奈に須田が慌てた声をあげる。
「全社員参加なんて言いながら毎年商品開発や広報宣伝の人のアイデアが採用されてるらしいじゃないですか。結局、商品に近い人に有利ってことです。だから記念参加というか、部長を喜ばせるために参加するって考えて気楽に応募したらいいんですよ」
あっけらかんと話す須田の陽気な声に杏奈は小さな笑い声を漏らす。
そうなのだ、全社員に参加を呼びかけているとはいっても、これまで採用されたのは商品開発や販売、宣伝に直接関わる社員のアイデアばかり。
やはり豊かな商品知識を持つという強みは侮れないということだ。
「三園さんが参加すれば総務部は全員参加。部長は泣いて喜びますよ」
「泣くなんて大げさ」
尚も勧める須田に杏奈は肩をすくめる。
「だけど、部長が喜んでくれるなら……」