冷徹御曹司の偽り妻のはずが、今日もひたすらに溺愛されています【憧れシンデレラシリーズ】

須田が言うように、ただ部長を喜ばせるために、それこそ記念参加という軽い気持ちで応募するのもいいかもしれない。

「あ、でも私は過去の実績なんて気にせず本気で採用を狙ってますから。スタッフ部門初、それも新入社員のアイデア採用って格好いいと思いません?」

「須田さん、頼もしくていいね」

須田の強気な性格に圧倒され、杏奈は即答する。

これほどポジティブで貪欲な性格なら、採用も夢ではないかもしれない。

「あ、すみません。今のうちにエントリーを済ませたいので作業に戻りますね。お昼なんて食べてる場合じゃないんですよ」 

「あ、邪魔してごめんね。頑張って」

杏奈は須田にそう声をかけながら、昼食を終えて席に戻った部長をチラリと見つめた。




仕事を終えて帰宅した杏奈は、両親が営むカフェ『アプリコット』を手伝っていた。

ウッド調で優しく温かい雰囲気の店内には四人掛けのテーブルが八つとカウンター席が六つあり、今はカウンター席以外すべて満席だ。

杏奈の両親が、食材にこだわり健康に配慮した料理をメインに据えたカフェを始めてから二十年以上経つが、健康志向の高まりを受けて連日多くの客が訪れている。

とくに金曜日の夜は多くの予約が入っていて、杏奈が手伝うことも多い。

大学生のアルバイトをふたり雇っているが、あいにく試験期間中で今週はふたりとも休み。

なおさら杏奈が手伝わないわけにはいかない状況だ。


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