冷徹御曹司の偽り妻のはずが、今日もひたすらに溺愛されています【憧れシンデレラシリーズ】
「やっぱり定番のチキンライスだな。最近なかなか来られなかったから食べたくて仕方がなかったんだ」
洸太がつくるチキンライスは響の昔からの大好物だ。
珍しく平日の夜に店に来たのは、どうしてもチキンライスが食べたかったからかもしれない。
お昼を食べていないとなれば、なおさらだ。
「かしこまりました。少しお待ちくださいね」
杏奈は笑顔を返し、気を抜くとつい落ち込んでしまう自分を心の中で叱咤した。
「もちろんサイズは大盛りだな」
杏奈たちのやりとりを聞いていたのか、杏奈の背後でフライパンを振っていた洸太が響に声をかける。
「昨日、基も食べに来たよ。会食が続くとうちのチキンライスが恋しくなるらしい。似たもの親子だな」
洸太はそう言って軽快な笑い声をあげる。
響の父であり北尾食品の社長の基は、多忙な仕事の合間を縫って洸太の料理を食べにカフェを訪れる。
コーヒー一杯だけで慌ただしく席を立つときもあるらしいが、重責を背負う彼にとってパワーチャージを兼ねた大切な時間なのだろう。
「舌だけじゃなく見た目も似てきたな。さっき響が入って来たとき、基かと思ったよ」
面白がる洸太に、響は肩をすくめる。
「それ、最近よく言われます。そういえば専務にも、昔商品開発の現場にいた頃の父さんと今の俺がかなり似てるって言われたな。杏奈もそう思うか?」
響は楽しげにそう言って杏奈に顔を向ける。