冷徹御曹司の偽り妻のはずが、今日もひたすらに溺愛されています【憧れシンデレラシリーズ】
「お待たせ。いつも通りコーヒーはホットでよかったよね」
杏奈は響の手元に淹れ立てのコーヒーを置いた。
すでに食事を終えてタブレットを眺めていた響は「ありがとう」と顔を上げる。
「あ、今日の記事?」
杏奈はタブレットに商品発表会の記事が出ているのに気づき、覗き込んだ。
「これって響君?」
写真には壇上で記者からの質問に答える響の姿が写っていた。
担当役員や営業部長など数人が並ぶ中、背が高く見栄えのいい響はひときわ目立っている。
おまけに商品に対する愛情や熱量が高く知識も豊富なので、こういう場に出席するたび響に質問が集中し、長い時間マイクが手放せないらしい。
「響君、今回も目立ってるね」
「そうだな」
響はくすりと笑い、コーヒーを口にする。
「あれこれ話しすぎて、できれば手短にって司会者にやんわり釘を刺されたよ。父さん……社長なら簡潔に対応するんだろうけど。そういうところも見習わないといけないな」
「それはそうだけど……」
父親へのリスペクトが垣間見える言葉は前向きで、さらりとそれを口にできるのも響の魅力のひとつ。
もちろんそれはわかっているが、杏奈の気持ちは複雑だ。