冷徹御曹司の偽り妻のはずが、今日もひたすらに溺愛されています【憧れシンデレラシリーズ】
「あ、応援で思い出したけど。昔大会のたびに応援に来てくれた杏奈、今みたいに夢中で叫んでたな。実はあれ、結構楽しみにしてた」
「夢中でって……たしかにそうだったけど」
照れくさい過去を思い出し、杏奈は口ごもる。
「小学生の杏奈、本当にかわいかった。あ、もちろん今もかわいいから安心しろ」
響は冗談交じりにそう言って肩を揺らし笑う。
気落ちする杏奈を気づかっているのだろう。
本当なら杏奈の方が大仕事を終えた響を労うべきなのに、逆に気を使わせている。
やはり現場のことなどなにも知らない自分は黙っているべきだったと、反省する。
それでも会社の利益のためだけでなく商品を必要とする人のためにと真摯に仕事に向き合う響の思いや努力を、杏奈は知っている。
たとえ社長がどれほど偉大でも、響ならいずれ超えられるはずだ。
その証拠に響はここ数年でいくつものヒット商品を生み出し、会社を代表する商品ともいえる料理の宅配事業を拡大し成功させた立役者でもある。
いずれ社長以上の優れた経営者になるのは間違いない。
杏奈は居心地の悪さにうつむきながらも、その思いだけは譲れないと密かにうなずいた。
「あ、あの、響君、今日はここに来てよかったの?」
響にこれ以上気を使わせるわけにはいかないと、杏奈は話題を変える。
「発表会のあとって開発の人と打ち上げとか、飲みに行ったりしないの?」