冷徹御曹司の偽り妻のはずが、今日もひたすらに溺愛されています【憧れシンデレラシリーズ】
響は一瞬目を瞬かせたが、杏奈の気持ちを察したのかふっと口もとを緩めた。
「打ち上げなら開発が完了した時点で終わってる。今はもう次の開発が始まっていてそれどころじゃないな」
「そうなんだ。響君の仕事は終わりがないから気が抜けなくて大変だね」
商品開発部は絶えず新商品の開発に向けて走り続け、既存商品のリニューアルが決まればそこにも力を注がなければならない。
継続的な会社の発展のために、エンドレスで業務が続くということだ。
「無理しないでね。今日みたいにお昼が食べられない日って多いんでしょう?」
出張も多い響の体調が気がかりで、杏奈は眉を寄せる。
「相変わらず心配性だな。今も時間を見つけて走ってるし、体力なら問題ない」
「それは、そうかもしれないけど」
多忙な毎日が続く響の体調が、やはり気にかかる。
「それより今日ここに寄ったのは、杏奈に会いたかったからなんだ」
響はふと思い出したようにつぶやいた。
「話をはぐらかさないで……え、私に?」
「そう。杏奈に会いたくて来たんだ」
思いもよらない言葉に、杏奈は目を丸くする。
「でも、えっと、なんで……」
聞き間違いだろうか。混乱し、つい声が裏返る。
「なんでって、そこまで驚くことないだろ?」
「だって」
くすくす笑う響に、杏奈の頬が緩んでいく。
まさかそんなうれしい言葉をかけられるとは、思ってもみなかった。


