『オーバーキル』これ以上、甘やかさないで

いつもながらに嫌そうに振り返った匠刀。
渋々振り返ったであろう彼の頬に、ジャンプしてキスした。

身長差30㎝ほど。
段差がないと、ほっぺにチューもできない。

「おまっ…」
「ミュージカルとパフェのお礼ねっ」
「なっ」

初めて見るってくらい、顔を赤くした匠刀。
意外な一面にきゅんとする。

「おいっ、苦しいのかっ?!」
「へ?」

無意識に胸に手が行ってたみたい。
きゅーっと締め付けられるこの感覚が初めてで、ちょっと驚いただけなのに。
彼に心配をかけてしまったらしい。

「ううん、大丈夫。ちょっと、きゅんとしただけだから」
「……ばーか」
「もう1回してあげようか?」
「ばっ……安売りすんなっ、アホ」

ホント、口が悪いんだから。
だけど、それが照れ隠しなのも知ってる。

「ずっと虎太くんが好きだと思ってたけど、本当は匠刀が好きだったみたい」
「は?」
「4年前の夏祭りの日にお姫様抱っこで運んで貰った男の子に恋してたんだ。あ、恋じゃなくて、恋もどき?」

匠刀のことだから、初恋だとか恋だとか言ったら、たぶん難癖付けて来そうだから。
アンニュイな表現にとどめておくのが一番だよね。

「えっ、……兄貴を好きになったきっかけってそれ?」
「うん」
「マジかよっ」
「だから、さっき確認したんじゃん」
「……」
「もしかしたら、匠刀だったのかな?と思って」
「……聞けよっっ、んなこと、幾らだって……」

はぁぁ~と盛大な溜息を吐いた彼は、足を止めてその場にしゃがみ込んでしまった。
……相当ショックだったらしい。

匠刀が私を好きになったのはいつからなんだろう?

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