『オーバーキル』一軍男子に脅かされています

両片想いってやつなのかな?
これって、一応。

「ここに」
「……あ?」

私の言葉に視線を持ち上げた彼。
そんな彼を真っすぐと見つめて。

「私の初カレになれる権利を提示するけど、どうする?」
「は?……どういう意味?」

真っすぐと見つめ返される視線は、焦ったような、嬉しいような。
ちょっと複雑そうな、そんな眼差し。

立ってると身長差で視線も合いづらいけど。
こうして二人して座ってたら、視線も気配も凄く近いよ。

エキナカのショップとショップの間にある通路。
その奥にはトイレがあって、時折、人の視線がチラッと向けられる程度の場所。

初めてでもないし。
誕生日だけど、匠刀とは気遣い無用な関係でいたいから。

ちょこんと彼に一歩近づいて、肩と肩がこつんとぶつかった。

そして……。

これが私の答えだよ。
ずっと何年も想い続けてくれた、ジェントルマンの君への想い。

ゆっくりと閉じた瞼。
これが何を意味してるのか。
察しのいい匠刀なら、分かるでしょ。

「……ばーか、アホ。安売りすんなっつったろっっ」

優しく触れ合った唇は、初めての時よりも長くて。
彼の気持ちが漏れ出すように、軽く甘噛みされた。

**

「お母さんが、夕飯食べにおいでって」

午後5時を回って、母親からメールが届いた。
『誕生日ケーキを買っておくね』と言ってたから、匠刀を呼んでパーティーでもするつもりなのだろうか?

「俺もいていいの?家族で祝うんじゃね?」
「何今さら。もうとっくに家族みたいなもんじゃん」
「っ……、じゃあ、遠慮なくお邪魔しますって伝えて」

彼氏だとか、付き合ってるからとかではなくて。
うちの親からしたら、ずっと昔から匠刀は特別な存在だよ。

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