【書籍化】もふもふ聖獣と今度こそ幸せになりたいのに、私を殺した王太子が溺愛MAXで迫ってきます

四章

(キャシディside)

キャシディ・オルランドはオルランド公爵の長女として生まれた。
キャシディは何ひとつとして不自由な思いをしたことはない。
ドレスも宝石もお菓子も手に入り、どんなわがままでも受け入れられてしまう。
兄がふたりいるキャシディはどんな時でもお姫様だった。
けれどその反面で心には大きな穴が空いていた。 

空虚な心を埋めるものは何もない。
ただ、つまらないドス黒い感情だけがキャシディの中に燻っていた。
どんなに横暴でも欲深くてもキャシディは許されてしまう。それがキャシディのつまらないを加速させていく。
兄達には厳しい父もキャシディには甘い。ニコリと笑えばそれで何もかもが手に入ってしまう。

(全部がわたくしの思い通りになってしまうのね)

両親も兄も立派な肉食獣の聖獣を連れていた。
オルランド公爵家は獅子を家紋に掲げている。
それはロドアルード王国ができた際に王家を守るために与えられた力だった。
オルランド公爵家はそれを誇りに思っていた。
ライオン、黒豹、虎、チーター、大きな聖獣達に囲まれて育ってきたキャシディにとっては、公爵家以外の小さくて弱そうな聖獣達を馬鹿にしていた。
素晴らしいキャシディ公爵家に生まれたことが誇らしい。
そう思っていたが、そんなキャシディの考えを一転する出来事が起こる。
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