【書籍化】もふもふ聖獣と今度こそ幸せになりたいのに、私を殺した王太子が溺愛MAXで迫ってきます
キャシディが十歳になり契約の儀にお気に入りの真っ赤なドレスを着て向かった時だった。
キャシディにとって異常ともいえる事態が起こる。
通常、契約の儀は高位貴族の令息、令嬢達から行われる。
キャシディは家族から期待を背負って壇上に立った。

(きっとお兄様よりもずっと、可愛くてかっこいい聖獣がくるはずよ……!)

無邪気にそう思っていたキャシディに悲劇が起こる。


「え……?」


光り輝く魔法陣、目の前に現れたのは小さな〝白蛇〟だった。
キャシディと同じエメラルドグリーンの瞳とチロチロと飛び出る舌を見てキャシディはその場から動けなかった。
オルランド公爵家にいる聖女とは違って、牙も毛も尻尾も生えていない。何もかも違う真っ白な長い体を見て、キャシディは息を止めた。
今まで自分が心の中で馬鹿にしていた小さな聖獣より、もっと小さい体。

(なにこれ?手違いで誰かの聖獣が紛れ込んでしまったのね。そうに違いないわ……そうじゃないと、わたくしはっ!)

先程まであんなに騒がしかった会場は、キャシディの様子を見てか静まり返っていた。
肉食獣と契約できると思っていたキャシディが、異例の蛇との契約。皆、キャシディの心情を察して何も言うことができなかった。
困惑する神官に促されるようにしてキャシディは階段を降りていく。
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