自国最強の騎士団長様は私が守ります。だって私、世界最強ですから!

 サラと共にカフェを出て、馬車に向かって歩いて行く。そして買ってきた物を馬車の中に運んでいると、怒号が聞こえてきた。人を避けるように一人の男性がこちらに向かって走っているのが見える。その手には血のついたナイフが握られていた。このままでは、また誰かを傷つけかねないと思ったリリアーヌは、男の前に飛び出した。

 その時、サラがこちらに向かって何かを投げてきた。

「リリアーヌ様!!」

 それを右手でキャッチすると、リリアーヌはサラから受け取った物(剣)を鞘から引き抜き、男と対峙した。すると男はニヤリと笑いながらリリアーヌを見つめた。

「嬢ちゃん、怪我をしたくなければそこをどきな」

 リリアーヌを女と見くびっている様子の男が、ナイフを振り上げた。それに合わせるようにリリアーヌも剣を振り上げる。ナイフと剣がぶつかり合い、辺りに金属音が鳴り響く。その音に、近くにいた女性達から悲鳴や、息を呑む音が聞こえてきた。リリアーヌは剣を交えたまま、腕に力を入れ一気に振り上げる。すると男の持っていたナイフが空高くへと飛んでいく。自分の手の中から消えてしまったナイフを目で追いながら男が「チッ」と舌打ちを打った。ナイフをあきらめた男がリリアーヌに向かって突っ込んでくる。

 バカな男……。

体当たりでもすれば、リリアーヌが吹っ飛ぶとでも思ったのだろう。しかしリリアーヌは男をヒラリと交わし、まるでダンスをするかの様に舞うと、男のみぞおち近くに剣の柄をめり込ませた。

「うぐっ……」

 男の口から苦しげな声が漏れたが、何とか両足で地面を踏ん張り立ち続けている。

 思いの他ねばるわね。

 リリアーヌはそう思いながら、そっと目を伏せスッと男に視線を向ける。するとペリドット色の瞳が青緑色に変化した。それは獲物を捕らえた獣の光を宿していた。

 流し目で男に向かって不敵に笑えば、男の喉がゴクリと鳴った。男はリリアーヌから放たれる殺気に、体がすくみ上がりそうになるが、それ以上のリリアーヌの色香に体が震える。

 こんなことは初めてだ。

 剣を向けられ殺されるかもしれない状況だというのに、胸が高鳴り殺されても良いと思っている自分がいる。
 
 男はその場に(くずお)れた。

「俺の負けだ」



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