誰にも言えない秘密の恋をしました       (君にこの唄を捧ぐ)

心菜は可愛い。
優しくて素直で何よりも心が綺麗で純真だ。
その笑顔で沢山の患者を癒し、慰め勇気づけるだろう。

それにまだ若いから、これからもっと周囲を魅了して綺麗になっていくのだろう。

誰かに奪われないように、傷付けられないように、俺が守り慈しみ愛したい。

だけど、男慣れしていない彼女に怖がられないように、嫌われないように少しずつ距離を縮めていかなくてはならない。

手を繋ぐのでさえビクビクされるのだから、もっと慎重に触れなければと思うのだけど会えば愛しさが込み上げて、触れたいという気持ちを制御出来ないでいる。

そんな彼女を家に泊めて、何もしないでいられるだろうか?
嫌がる事はするつもりは毛頭無いが、少しずつ触れられる事に慣れて行って欲しいとは思う。

心菜を連れてスーパーに入る。

俺はカートを押して心菜の後ろを着いて行く。
たまに振り返って不安気な目線を投げかけて来るのが可愛いくて、つい道を外れていろいろな食材に目を運ぶ。

それに気付くとパタパタと戻って来て俺の心を探ってくれる。気遣いがまた愛おしいと思ってしまう。

「蓮さん、これ食べてみたいですか?」

アボガドに目を向けて立ち止まっていたら、案の定心菜が隣に戻って来て、食べてみたいか聞いてくる。

「アボガドってこんな殻が硬いんだな。」
そんな当たり前な事を知らない俺を、バカにしないで真剣にどれが熟れてて美味しいか教えてくれる。

正直、スーパーで食材を買う当たり前な事ですらした事が無かった。
食べたいと言えば、家政婦が買って来て食べれる形になって食卓に並べられる。

それが当たり前だったから、知識的には知っていてもそのものがどんな硬さで手触りなんだと知る事が無かったし、知りたいとも思わなかった。

< 129 / 287 >

この作品をシェア

pagetop