仮面夫婦を望んだ冷徹な若社長は妻にだけ惚けるような愛を注ぐ。【逃亡不可避な溺愛シリーズ1】
 それからまた数週間後。

 芽惟が訪れたのは、この間とは違うカフェ。この間のカフェはどちらかと言えば若者向けだった。対するこのカフェは年配の人向けに作られているらしく、おしゃれというよりも上品な印象を醸し出している。

 カフェに入店して、芽惟は待ち合わせであることを伝える。その後、周囲をきょろきょろと見渡せば、すぐに目的の人物――麗美を見つけることが出来た。

「ごめん、バス、遅れちゃってて」

 苦笑を浮かべて、麗美に謝罪する。すると、麗美はぶんぶんと手を振っていた。どうやら、気にしていないらしい。

「いいのよ。交通機関は遅延するし。それに、連絡入れてくれたから助かったよ」

 ニコニコと笑ってそう言う麗美の目の前には、レモンのタルトがある。どうやら、芽惟が来るのが遅れると連絡を入れた際に頼んだものらしかった。もう半分ほど減っている。

「……で、今日はこの間の取材の報告……だっけ?」

 つい数日前に麗美から連絡があり、何でもこの間の取材の報告がしたいということだった。

 正直なところ、報告を聞くよりも仕事をしていたい……という気持ちが、ないわけではない。しかし、仕方がないのだ。あのとき報告を聞くと言ってしまったが最後、責任が付いて回っている。

「そうそう。……この間の取材が、大成功したから芽惟にお礼を……と思って」
「……大成功?」
「そう。編集長にも褒められちゃった!」

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