仮面夫婦を望んだ冷徹な若社長は妻にだけ惚けるような愛を注ぐ。【逃亡不可避な溺愛シリーズ1】
 うんうんと頷いて、麗美がそう言う。その後、カフェのメニューを押し付けてきた。

「今日は私のおごり。なんでも食べていいよ~」

 どうやら、麗美はかなり機嫌がいいらしい。それを悟りつつ、芽惟はメニューを受け取り、中身を見る。

(こういうときの麗美は、全く引いてくれないからなぁ……。まぁ、何か頼もう)

 麗美はこうなると全く引いてくれない。なので、大人しく何か小さなものをおごってもらって、帰ろう。そう、思う。

「じゃあ、フルーツタルトとカフェモカで」
「わかった!」

 芽惟が注文を決めると、麗美が素早く注文を済ませてくれる。本人はミルクコーヒーのお代わりもオーダーしていた。

 本当に、機嫌がよろしそうだ。

「……でも、大成功ってなにがあったの? 普通に取材しただけでしょう?」

 普通に取材しただけに、成功も大成功もないだろう。

「何言っているの? この間芽惟に言われたことを実践したのよ」
「……私、何言ったっけ?」

 きょとんとして芽惟がそう言葉を返せば、麗美は笑っていた。その笑みは、何処となく呆れたようなものだ。

「もうっ! 双方にメリットがあることを提示するとか……なんとか?」
「言ったような気もするわ」

 確かに、そんなことを言ったような気もする。市原ホールディングスにもメリットがあるということを提示すれば、敦也もある程度は協力的になってくれるのではないか……とか、そういうことだろう。

 言った。それに関しては、確かに言った。

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