仮面夫婦を望んだ冷徹な若社長は妻にだけ惚けるような愛を注ぐ。【逃亡不可避な溺愛シリーズ1】
 そして、芽惟の視線がその男性の顔に向く。

(……うわぁ、美人)

 何だろうか。男性に美人という褒め言葉を使うものなのかはいまいちよくわからない。けれど、彼はかっこいいというよりは、美しいという印象を与えてくる男性だった。

 さらりとした、黒色の短い髪。その目の形は鋭いものの、目元を縁取るまつげは長い。

 身長は高いものの、体格はがっしりとはしていない。どちらかと言えば細身な男性だった。

「すみません、少し、道が混んでいまして」
「いえ、お構いなく」

 男性が麗美にそう声をかけて、彼女の隣に腰掛ける。

 やってきた店員に素早くアイスコーヒーを注文し、彼は芽惟に視線を向けた。

 ……まるで、何もかもを見透かしてしまいそうな目だと、思ってしまう。

「芽惟。こちらは市原 敦也さん」
「……うん?」

 何だろうか。今、聞こえるはずのない名前が聞こえたような――。

「実は、芽惟を紹介してほしいって、頼まれたの」
「……うん?」

 本当に意味がわからない。

 芽惟のその気持ちは麗美にも男性――敦也にもしっかりと伝わっていたのだろう。彼らが顔を見合わせる。

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