18婚~ヤンデレな旦那さまに溺愛されています~
「美景のことなら前にも言ったはずだ。家族に不幸があって精神的に参っているんだ。力になってやれるのは私しかいないのだと話しただろう?」
その言葉に母は怒りの形相で父を睨みつけながら言った。
「名前で呼ぶのね。そうよね。元カノだものね。私との結婚話がなければ、あなたは彼女と結ばれるはずだったものね」
それに対して父はものすごい剣幕で怒鳴った。
「いい加減にしろ。過ぎたことを今さら、しつこいぞ」
「あなたはいつだって彼女のことばかり。私のことを一度でも見てくれたことがあったかしら?」
母は今にも泣きそうな顔をしている。
父は呆れ顔でため息をつく。
「これ以上話しても意味がない。お互いに冷静になるべきだ」
部屋を出ていこうとする父の腕を、母がつかんだ。
「待って! 答えてよ。私はずっと耐えてきたわ。秋月家のために、あなたのために、遥のために! お義父さまにどんなに罵られようとも、私は自分を犠牲にしてこの家のために尽くしてきたのよ! それなのに、あなたは……」
父はまるで憐れむような目で母を見つめた。
無言だった。
遥は父と母がこれほど激しい喧嘩をするのを見るのは初めてだった。
そもそも、ほとんどふたりが会話をしているところを見たことがなかった。
彼らのやりとりを見ながら遥は恐怖に打ち震えた。
そして、願った。
おとうさん、おかあさん、けんかしないで。