18婚~ヤンデレな旦那さまに溺愛されています~
母の葬儀のとき、秋月家に多くの親戚が集まった。
遥は目の前が真っ暗になった気分で、ほとんど視界に映るものを把握できなかった。
ただ、ぼんやりと母の遺影を見つめているだけだった。
心の中では己を責め続けた。
おかあさんをまもるってきめたのに。
おかあさんをまもれなかった。
多くの人々が葬儀に参列しており、その中には子供も数人いたが、遥はそれも眼中になかった。
「ほら、由希ちゃん。みなさまにご挨拶しなさい」
喪服姿の女性が、あちこち歩きまわる女の子に注意をしていた。
女の子は他の大人たちに向かって「こんにちは」と挨拶をしていた。
そして、女の子はトコトコ歩いてきて、遥の前に立って笑った。
「こんにちは」
遥は女の子に視線だけ向けたが、無言だった。
すると、大人の女性がやって来て、慌てながら女の子の手を引いた。
「こら、由希ちゃん」
「だって、あいさつ……」
「いいから!」
大人の女性は複雑な表情で遥に会釈をした。
母を亡くした息子の心情を気遣ってのことなのだろうが、遥にとってはどうでもいいことだった。
何も考えず、ぐるりと周囲を見わたすと、遥の目に父と知らない女の姿が映った。
父は何度も女に会釈をしていて、女はハンカチで涙を拭く仕草をしていた。
だれ? あのおんなのひと……。