18婚~ヤンデレな旦那さまに溺愛されています~
「疲れたよ……本当に、疲れた」
遥はよくこんなことを呟いた。
学校では母を亡くして弱っている遥に嫌がらせをする者が多かった。
それまで母に守られていた遥は気づいたら周囲は敵ばかりだった。
しかし、彼は生きるために、自分を守るために、敵には相応の仕返しをして、どうにか精神を保っていた。
ある日の昼下がり。
晴れて暖かい日曜日のことだった。
今日は来客があるということだったが、遥はいつものように部屋にこもっていた。
父には勉強があるからと誰にも会わないと伝えている。
もうずいぶん前からそうしているので、父も何も言わなかった。
生活に困ることはないのに、心はあまりにも貧しくて、常に冷たい風が吹きすさんでいるようだった。
窓を開けていたせいで、庭にいる奏太の泣き声が聞こえてきた。
最近は夜泣きが酷いらしく、真夜中にリビングやキッチンに美景がいることが多くなった。
彼女は奏太を抱いてあやしながら、歩きまわるのだ。
夜食を食べるためにキッチンへ行く遥には、それが鬱陶しくてたまらなかった。
「うるさいな」
遥が窓を閉めようとしたとき、突然、別の声が響いてきた。
「わあぁ、赤ちゃんだあ!」
遥は窓に手をかけたまま、庭を見下ろした。
大きなりぼんとレースのひらひらしたドレスのような服を着た小さな女の子が、笑顔で奏太に駆け寄っていた。