【極上溺愛】エリート鬼上司は無垢な彼女のすべてを奪いたい

 彼は答えをもったうえで部下を指導している。あくまで本人に気づかせ、本人の成功体験に繋げられるように立ち回っている。

「はがゆいなぁ」

 聞こえないようにつぶやいた。

 こんなに愛情を持った鬼部長が、ほかにいるだろうか。営業部のメンバーにも賢人さんの優しさに気づいてほしいけれど、それは彼の望むところではないのだ。

 私の思考を読んだように賢人さんは絡めた指に力を込める。

「俺は大丈夫。そのぶん和花に癒されてるから」

 こめかみにキスをされて顔から火が出そうだ。

「ダメですよ、こんな路上で」

「はいはい、気をつけます」

 いたずらっぽく笑う彼に「もう」と頬を膨らませているうちに、前方に三階建ての木造アパートが見えてきた。大学の頃から住んでいる築三十年の『エバーハイツ』。ここの三〇三号室が私の城だ。

 アパートの前で立ち止まり、賢人さんと向き合う。

 路上ではダメ、なんて言いつつ、送ってもらったときはいつもここでキスをして別れることが習慣になっていた。

 彼の長い指が私の頬に触れ、いつものように顔が近づいてきた瞬間だった。

「和花?」

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