一つの夜が紡ぐ運命の恋物語を、あなたと
「母が本好きな人だったからかな。絵本もそれなりに読んでる。そうだな……。僕のお気に入りは、三びきのやぎのがらがらどん、だな」

 由依はもちろんその絵本を知っている。意外なような、そうでないような気持ちで頷いていたが、他の三人はキョトンとした表情を浮かべていた。

「初めて聞いた。どんな話?」

 残り少なくなったビールを口に運びながら佐倉が尋ねる。大智は表情を緩めると由依に顔を向けた。

「瀬奈さんは知ってる?」
「……はい。勤務先の園にも置いてます」
「じゃあどんな話か、教えてやってくれない? 僕もきっとうろ覚えだ」

 見目良い顔で微笑む大智に頰を熱くさせながら、由依は首を縦に振る。
 それから由依は、興味津々で自分を見る皆の視線に気恥ずかしさを覚えながら、絵本の内容を思い出して話し出した。
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