一つの夜が紡ぐ運命の恋物語を、あなたと
 出たのは若い男性だった。不意打ちをくらい、喉の奥に声が張り付いたように言葉が出てこない。絞り出すように、なんとか声を発した。

「あ……、の。これは、瀬奈さんの番号では……」

 外なのか、ガヤガヤとした喧騒を背に、相手は『あぁ……』と呆れたように答えた。

『また? この番号、たまにこうやって電話かかってくるんだけどさ。その瀬奈さんとやらとは関係ないから。会うことあったら迷惑してるって言っといてくんない?』

 電話の向こうの遠くでは笑い声が響いている。それが自分に向けられているように突き刺さった。

「……すみませんでした」

 呆然としたまま無意識で答える。相手は明るい口調で続けた。

『ま、いいけど。そういや、今までおばさんばっかだったけど、男の人なんて珍しいかも。とにかく、違うからさ。じゃ、そういうことで』

 相手は言うが早いか電話を切り、無機質な音が虚しく流れていた。

(そうか……。由依は……最初から……)

 一緒にいたとき時折見せた、どこか後ろめたいような、罪悪感を抱いているような表情はそういうことだったのかと腑に落ちた。それに気づいていながら、奇跡のように再会し、これは運命だなんて一人悦に入っていた。
 
 これは、何も言わなくても由依なら受け止めてくれるだろうと考えた、傲慢な自分への罰だ。
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