一つの夜が紡ぐ運命の恋物語を、あなたと
「由依らしい心配だね。確かに、家賃は一番高い部屋だけど、今美礼に渡してる部屋代と、借りっぱなしの自分の家に駐車場代を考えたら、さほど変わらないよ」

 心配していたのはそこなのか、と言いたげな様子で大智は笑っている。

「そう……なんですか? 相場とかわからなくて……」
「うん。僕もだよ。だから一応、リサーチしてきたよ。ここはなかなかの好物件だし、仮押さえしておく?」

 自分たちが話しているあいだ、灯希はリビングにできた陽だまりに転がって遊んでいる。ふとそこに、大智と一緒にいる光景が浮かんだ。

(ここに住めたら……。嬉しい、かも……)

 そんな思いが湧き上がり、大智に向かい頷いていた。

 一度不動産会社に戻り、手続きを済ませる。
 仮押さえといっても、実は契約前提の申し込みのことで驚く。彼はもちろんそれを知っていた上で話していたらしい。審査を経て契約を結ぶことになるが、問題なく通るだろうと担当してくれた社員は言っていた。

 また家の最寄り駅に戻り、美礼が勧めてくれたというカフェに入る。自分が住んでいる場所から見ると駅の反対側で、あまり来ないところだ。
 小さな子ども連れでも気軽に入れるを売りにしている店らしく、端にはキッズコーナーもあった。

「こんなにあっさり決めちゃって、よかったんですか?」

 運ばれてきたミルクティーで一息ついてから大智に尋ねる。彼はコーヒーカップを口に運びながら笑みを浮かべた。

「もちろん。なんでだろうね……。家の作りは全く違うのに、昔美礼が住んでいた家に似てると思って。陽だまりで転がって、よく絵本を読んでたんだ」

 彼は懐かしそうな表情をしながら、自分たちのあいだの席でパンケーキを頬張る灯希を見つめていた。

「不思議です。さっき、大智さんと灯希のそんな光景が浮かんだんです」

 同じことを考えていたことに驚きながらも、どこか嬉しくもある。声を弾ませながら言うと、彼はゆったりと微笑んだ。

「これからはそこに、由依もいるんだよ。僕たちは家族になるんだろう?」

 改めてそう言われて実感する。
 そうだ。家族になるんだと。
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