一つの夜が紡ぐ運命の恋物語を、あなたと
樹はなんとなく不愉快そうに顔を歪めている。どうしたんだろうと思いながら、取り繕うように口を開いた。
「さっ、さっきの人、すごく可愛い人だったね。たっちゃん、知ってる人だったの?」
「いや……全く。けど俺は可愛いなんて少しも思わないし、むしろ気に食わない」
「えっ? 知らない人なのにどうして?」
玄関の三和土で立ち尽くしたまま、驚いて樹を見上げる。樹は眉間に皺を刻んだまま口を開いた。
「さっきのやつ、由依を全く見なかった。困ったときは同性を頼るのが自然だ。なのに俺に聞いたのは、男は自分に尽くして当たり前って思ってるからだろうな。まぁ、いるけどな。ああいう性格の女。俺の嫌いな人種だ」
樹はデザイナーで、レディースも扱っている。仕事上、いろんなタイプの女性たちを見てきたのだろう。辟易とした様子で吐き捨てた。
確かに彼女はこちらを見ようとしなかったが、そんな性格だなんて思いもしなかった。というよりも、少し話しただけで何となく察した樹が凄いのかも知れない。
「そう……なんだ……」
唖然としたままそう呟くと、樹は背中を向けて靴を脱ぎながら言う。
「持ってるバッグも着てたコートも、超が付くほど高級品だったし、甘やかされてるんだろうな。ま、俺には関係ないけど」
その台詞と、若木先生の"お嬢様"の言葉が重なった気がした。
(……偶然? でも……)
急激に空気が冷えていくようで身震いする。もしそうだったらと思うと、不安だけが押し寄せてきた。
「……由依?」
進みかけた樹が、動こうとしない自分を不審に思ったのか振り返った。
「たっちゃん、あの。話しておきたいことがあるの。眞央さんにも。あとで時間もらえるかな?」
切羽詰まったような表情の自分に、樹は「わかった」と険しい顔で返事をした。
久しぶりにみんなで囲む食卓は、嬉しいはずなのに心から楽しめない。心配させないように無理矢理明るく振る舞うしかなかった。
そしていつも通りに灯希を寝かしつけると、ダイニングに戻る。二人は温かいお茶を淹れて待っていてくれた。
それを飲みながら、向かいに座る二人に、大智のストーカーの存在を話して聞かせる。どちらも表情を曇らせて話を聞いていた。
「さっきの女が……そうかも知れないってことだよな」
「わからない。でも、もしかしたら……」
暗い表情で答えると、「さっきって?」と眞央が尋ねる。今度は樹が、ついさっきあった出来事を話して聞かせていた。
「さっ、さっきの人、すごく可愛い人だったね。たっちゃん、知ってる人だったの?」
「いや……全く。けど俺は可愛いなんて少しも思わないし、むしろ気に食わない」
「えっ? 知らない人なのにどうして?」
玄関の三和土で立ち尽くしたまま、驚いて樹を見上げる。樹は眉間に皺を刻んだまま口を開いた。
「さっきのやつ、由依を全く見なかった。困ったときは同性を頼るのが自然だ。なのに俺に聞いたのは、男は自分に尽くして当たり前って思ってるからだろうな。まぁ、いるけどな。ああいう性格の女。俺の嫌いな人種だ」
樹はデザイナーで、レディースも扱っている。仕事上、いろんなタイプの女性たちを見てきたのだろう。辟易とした様子で吐き捨てた。
確かに彼女はこちらを見ようとしなかったが、そんな性格だなんて思いもしなかった。というよりも、少し話しただけで何となく察した樹が凄いのかも知れない。
「そう……なんだ……」
唖然としたままそう呟くと、樹は背中を向けて靴を脱ぎながら言う。
「持ってるバッグも着てたコートも、超が付くほど高級品だったし、甘やかされてるんだろうな。ま、俺には関係ないけど」
その台詞と、若木先生の"お嬢様"の言葉が重なった気がした。
(……偶然? でも……)
急激に空気が冷えていくようで身震いする。もしそうだったらと思うと、不安だけが押し寄せてきた。
「……由依?」
進みかけた樹が、動こうとしない自分を不審に思ったのか振り返った。
「たっちゃん、あの。話しておきたいことがあるの。眞央さんにも。あとで時間もらえるかな?」
切羽詰まったような表情の自分に、樹は「わかった」と険しい顔で返事をした。
久しぶりにみんなで囲む食卓は、嬉しいはずなのに心から楽しめない。心配させないように無理矢理明るく振る舞うしかなかった。
そしていつも通りに灯希を寝かしつけると、ダイニングに戻る。二人は温かいお茶を淹れて待っていてくれた。
それを飲みながら、向かいに座る二人に、大智のストーカーの存在を話して聞かせる。どちらも表情を曇らせて話を聞いていた。
「さっきの女が……そうかも知れないってことだよな」
「わからない。でも、もしかしたら……」
暗い表情で答えると、「さっきって?」と眞央が尋ねる。今度は樹が、ついさっきあった出来事を話して聞かせていた。