一つの夜が紡ぐ運命の恋物語を、あなたと
「僕はおじちゃんで構いませんよ」
「……すみません。陽向を見つけてくださって、ありがとうございます」

 ニコリと笑う大智に、陽向の母は決まりの悪そうな表情で礼を述べた。そんな母にせがむように、陽向は服の裾を引っ張った。

「ねぇねぇ、ママ。ペンギン見に行こう? おじちゃんたちも一緒に行ってくれるって!」
「ごめんね、陽向。赤ちゃんがお腹すいててさっきから泣いてるの。あとにしましょう?」

 そう言う母の胸には、由依が想像していたより小さい赤ちゃんが抱かれていた。おそらくまだ半年にもなっていないだろう。顔は見えないが、抱っこひもから覗く小さな手が愛らしい。けれど時折、泣き声を上げていた。
 陽向は俯くと、何も言わず唇を噛んでいた。わがままを言えば、母を困らせるのはわかっているのだ。

「もし……よろしければ。僕が先に陽向君を連れて行きますよ。見ず知らずの他人に任せるのはご不安だと思いますが……」

 大智が先に、由依が言い出そうと思ったことを口にする。驚いたように「でも、ご迷惑じゃ……」と返す彼女に、今度は由依は首を振って答える。
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