一つの夜が紡ぐ運命の恋物語を、あなたと
「ママ! 見て! ペンギンいたよ!」

 大智の腕から降りると、陽向はすぐさま母の元へ駆け寄った。

「本当だ。よかったね、陽向」

 そう言って彼女は陽向の頭を一撫ですると顔を上げた。

「お二人とも、この子を見てくださってありがとうございました。大変助かりました」

 丁寧にそう言って頭を下げる彼女に由依は返す。

「こちらこそ、陽向君と一緒にいられて楽しかったです。お役に立てたなら何よりです」

 陽向はママが戻ってきて嬉しいのか、「ねぇ、ママ!」と話しかけている。また陽向に向くと、彼女は嬉しそうに言った。

「あのね。パパ、お仕事が終わって、もうすぐ帰ってくるんだって」
「ほんと?」

 パァッ明るい表情になると、陽向は飛び跳ねて喜んでいる。そこまで喜ぶ理由は、さっき陽向自身が教えてくれていた。

『今日はパパと来るはずだったけど、お仕事が入ったんだって』

 普段は遠くで仕事をしていて、なかなか会えないこと。パパと来るはずだった水族館に、ママが連れて来てくれたことを。

「良かったね、陽向君」

 由依が話しかけると、「うん!」と太陽のような笑顔が返ってきた。

「じゃあ、私たちはこれで。陽向、ご挨拶は?」

 母と手を繋いだ陽向は自分たちを見上げた。

「ありがとう、おじちゃん! 由依ちゃん! また明日ね!」

 保育園で言っているのか、最後にそう言って手を振る。深い意味なんてないだろう。微笑ましく思いながら手を振り返す。大智は隣で小さく手を振りながら、「またね。陽向君」と返していた。
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