侯爵夫人の復讐
部屋へ戻るとセドルがデザートのケーキと紅茶を用意していた。
キルアはソファにゆったり腰を下ろす。
紅茶を飲むキルアのそばで、セドルは直立不動の姿勢をとる。
「なかなか面白いことをしてくれるじゃない」
「お褒めいただき、ありがとうございます」
「どうやったの?」
「旦那さまが昨夜召し上がられたキャロットスープに薬を混ぜておきました」
「あの人、あのスープを寝る前に飲むのが好きだものね。でも、正直ここまで効果があるなんて思いもしなかったわ」
「その薬は時間をかけてじわじわ効いてくるのです。ですから、昨夜飲んでからちょうど20時間経つ今頃が効果てきめんかと」
冷静に表情変えず話すセドルに向けて、キルアは満足げに笑う。
「ソフィアのあの顔を見た?」
「はい。欲求不満が爆発しそうな顔をしておられました」
「ふっ……言い方」
「失礼しました。俺にはあの女がそのように見えましたので」
「まあ、そうね。ソフィアも朝までデリーと過ごすつもりだったのでしょうけど、部屋へ入ってわずか30分で出てくるなんて思いもしなかったでしょうね」
キルアは赤いゼリーとソースがかかったラズベリーのケーキをじっくりと見つめる。
まるでソフィアのように見えて滑稽だった。
キルアは真顔でフォークをケーキにぶっ刺す。それからぐしゃっとケーキを崩していく。
口に入れるとほんのり酸っぱいベリーと甘いゼリーの味が広がった。
キルアは上品に紅茶を飲みながら笑みを浮かべている。
「プライドはズタズタでしょうね」
美しい形を失ったケーキはただの赤い塊になっていた。