侯爵夫人の復讐
ソフィアが会いに来なくなってしばらくは、デリーの興味はキルアに向けられていた。
デリーは毎日のように寝室をともにしようとするので、キルアはそのたびに睡眠薬を飲ませるのに苦労した。
以前はセドルが前もって準備しておいてくれたが、今は自分でこっそり薬を盛らなければならない。
なかなか困難なことだった。
いつまでこの生活を続けるのかうんざりしていたところ、突如ソフィアが屋敷を訪れた。
「あたし、やっぱりあなたがいないとダメなの」
「ソフィア、ようやく気づいたか。待っていたぞ」
周囲の目など気にも留めず、デリーはソフィアと熱い抱擁を交わした。
そしてキルアが姿を現わすと、デリーは余裕じみた表情で笑った。
「おい、お前はもう一緒に寝なくてもいいぞ。どうせ俺と一緒に寝るのが嫌なのだろう?」
キルアは心の底から安堵し、さらりと返答した。
「わかりました。そうします」
「な、何ぃっ!?」
デリーは急に怒りの表情になり、ソフィアを押しのけてキルアに詰め寄った。
「お前は、俺が他の女と寝ると言って何とも思わないのか?」
「何を思えばいいのでしょう? 結婚したときから旦那さまはずっとそうしているではありませんか」
「お前のせいだぞ! お前に可愛げがないせいだ!」
デリーはわざわざキルアの眼前に何度も指を差して訴える。
しかし、キルアは冷静に真顔で彼を見つめるだけだった。
デリーは慌ててソフィアのところへ戻り、彼女をぐいっと抱き寄せる。
「俺が他の女になびくのは全部お前のせいだ。お前が女らしくしないからだ。お前の態度が冷めているからだ。もっと俺に尽くす女だったら可愛がってやったものを!」
キルアは何も言わない。
デリーは怒りの滲む表情でわざと笑い声を上げながら言い放つ。
「その点、ソフィアはいい女だ。俺を満足させてくれる。ソフィアこそが俺の妻にふさわしい」
「でしたら、私と離縁してそちらの方と再婚なさればよろしいでしょう?」
「な、何ぃっ!? こいつ……!」
「私は忙しいので失礼します。旦那さまから与えられた大量の仕事をこなさなければならないので。では」
「ま、待てっ……!」